INTERVIEW
手探りで始めたIoTプロジェクトを、夢に向かって育てていきたい
# クロストーク
#プロジェクト事例
和田 一洋
(写真中央)
Kazuhiro Wada
株式会社GxP
取締役 執行役員 副本部長
柿木 克之
(写真左)
Katsuyuki Kakinoki
Blue Wych合同会社
代表社員 工学博士
保坂 好紀
(写真右)
Yoshinori Hosaka
株式会社GxP
ビジネスソリューション第二事業本部 ビジネスソリューション第四部
Platform Engineering Team Unit
リーダー/シニアソフトウェアエンジニア
自転車競技の日本代表選手の強化トレーニングの促進を目的とした、トレーニングに使用するデータ収集・解析サービスの開発。IoTの技術を駆使したプロジェクトについて、GxPとBlue Wychの2社がどのようにサービスをカタチにしていったのか話を伺った。
ー まずはじめに、プロジェクトの概要を教えてください。
保坂:
自転車競技の日本代表選手のトレーニングを支援するデータ収集・解析システムの開発に携わりました。自転車に「パワーメーター」という計測器を取り付け、そこで得られた値をスマートフォン経由でクラウドに送ります。データはクラウド側で分析され、それをもとにコーチがトレーニング指導などを行います。
日本代表選手や国内トップレベルの選手に対してデータ分析に基づく強化トレーニングをされている柿木さんから、データ分析ソフトの開発について当社に依頼があったことが、このプロジェクトが始まりでした。
ー 柿木さんはどのような理由で、自転車競技のトップアスリート向けにデータ収集・解析システムが必要だと考えたのでしょうか?
柿木:
日本代表選手のデータ分析とアドバイスは昔から行っているのですが、2005年ぐらいからパワーメーターから得た「選手の動作の記録」をもとにした選手の強化法を追求してきました。その中で「パワーメーターから得た数値を自動計算して分析結果から強化法が導けないだろうか」と思ったことがきっかけです。2011年ぐらいからそのようなことをずっと考えていて、2013年頃になってやっと構想がまとまってきたので、以前から接点のあったグロースエクスパートナーズに「一緒にできないか」と声をかけました。

ー このシステムは、どのような形で選手の強化に役立つのでしょうか?
柿木:
まずコーチの観点からは、パワーメーターから収集したデータのうち分析によって重要な部分だけが表示されるのでトレーニングメニューの改善がしやすくなるという利点があります。選手の観点からは、分析結果を走行直後に見ることができるので、「さっきの自分の走りは良かったのか・悪かったのか」が選手自身でも確かめやすくなりました。
今後、選手が更に強くなるためには、運動生理学的な知見を背景にしたデータ分析と検証の繰り返しが必要不可欠だと考えていたので、構想を形にすることができて良かったです。このシステムは日本代表チームでも活用してもらっています。
ー 最初は、プロジェクトをどのように進めていったのでしょうか?
保坂:
柿木さんが当社に依頼した最初の打ち合わせで化学式を見せられて、とても戸惑ったのを覚えています(笑)。
柿木:
私は化学分野に特化したソフトウェア開発にしか関わってきていなかったので、相手のエンジニアも化学の専門家だったのです。今回はお互いに初めての分野での共同作業となったので、自分が描いているイメージをどういうふうに伝えればいいのかよくわからなくて、私も戸惑いました(笑)。
当時は仕様書をつくるといった発想もなくて、私がつくっていた計算式や分析の仕方をそのまま保坂さんに説明していました。それもあって、私が何をしたいと思っているかを理解していただくプロセスにはけっこう時間がかかってしまいました。
保坂:
そうですね。説明だけ聞いても「何が分からないのかが分からない」といった感じでした。そこで、まずはデータ分析の手法について理解したいと考え、業務支援をするソフトを開発するところから着手しました。といっても、説明だけではわからないので柿木さんがやっている分析作業を1つ1つフロー図に書き起こしながら、各用語の概念を確認し、ようやくプロトタイプを作ることができたのです。
そこからはプロトタイプを試してもらいながら改善を繰り返すようにしています。

ー 最初は本当に手探りで進めていったのですね。柿木さんの頭の中にあるイメージを理解できたのはどのような瞬間でしたか?
保坂:
明確にイメージできたのは実際に使っている現場を見たときです。伊豆ベロドロームという自転車競技場で、トレーニングの現場で選手やコーチがどうやってソフトを使っているのかを間近に見ることができました。
実際に現場を見ることで自分が作っているものの価値や、今後何を優先してソフトの改善を進めたらいいかなどがはっきりと理解できました。
当たり前のことですが、改めて現場を知ることの大切さを実感しました。
和田:
かなり特殊なドメインのプロジェクトで、なかなか当社の中に専門知識を持っているエンジニアがいなかったので、メインで担当された保坂さんは本当に大変だったと思いますね。
保坂:
自分としては新しい経験が多く、大変という以上に楽しく取り組めましたよ(笑)。
ー どのような考え方で、アーキテクチャ設計を行ったのですか?工夫をした点があれば教えてください。
保坂:
システムの構造を柔軟にすることですね。当初、ソフトウェアはスタンドアローンのデスクトップアプリとして開発しました。ただし、内部的には画面の表示機能と分析機能を分離しておくことで、あとから分析機能だけをクラウド上に移行することができました。
和田:
私は途中からこのプロジェクトに入りましたが、機能の重要性、技術的な安定性、開発の生産性、エンジニアの保守性や拡張性といった様々な観点でアーキテクチャが設計されていたので、とても興味深かったです。特に、どこにこだわるのか、注力すべきかを考えることが重要だなと改めて思いました。
保坂:
自社開発のプロジェクトということもあって、根本から自分たちで考えて、行きたい方向に進んでいけたところは面白かったですね。
ー これから先はどのような挑戦をしていきたいですか?
柿木:
私のようなデータ分析による選手強化法は、まだまだITの力で良くなる余地がたくさんあると考えているので、この取り組みが日本の自転車競技の次のステップへと繋がるようにしていきたいですね。
あとは、こうしたアスリート向けのシステムをアマチュア向けのサービスにしていきたいという想いも持っています。誰もが認めるような実績を積んで、より高いレベルのサービスを目指していきたいです。
保坂:
私も柿木さんと一緒で、より多くの方に使ってもらえるサービスにしていくことが夢ですね。そのためにサービスがどうあったらいいのかを柿木さんや社内のメンバーと一緒に考えていくのがこれから楽しみです。今後も継続してチャレンジを続けていきたいなと思います。

※記事の内容は取材時点のもので、現時点での情報と異なる場合があります。
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